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「ふわわわぁぁぁ~…」
夜も更けて。
慧太さんに連れられ、彼
専用のロッカールームに
入ったあたしは、思わず
大あくび。
ホストって……
座ってるからそんなに体力
使わないかと思ってたけど
………なかなかキツい。
「まあ初日だしってのも
あるだろ」
スーツのジャケットを
ハンガーにかけながら言う
慧太さん。
「そのうち慣れるよ」
「………そうですかね」
あたしはとても慣れそうに
思いませんよ。
おば様方やお姉様方の香水
の匂いにも…
ホストトークにも……
飲み物が頼まれたときの
あのテンションにも………
「はぁぁぁぁ~……」
また大きなあくびをした
あたしを見て、慧太さんは
「でもあれだろ、やっぱ。
女の子だからお客さんの
ツボとかわかるでしょ」
さらっと言った。
「同じ女なんだし。
こういうこと言ってほしい
とかさ」
いやいやいやいや!
「全ッ然、そんなこと
ないです!」
「あ、そう」
両手をブンブン振って全力
で否定するあたしに、慧太
さんは
「まあね、俺も一応男
だけど男心とかわかんない
し……
それと一緒かな?」
と、首を傾げる。
……ちょっと違うと思うん
ですけど………
っていうか、全く違うし!
首をぶんぶん横に振るあたし
に、
「そう?
男心も女心もなかなか
奥が深いからね。
知りたいな、男心…………」
遠い目線でそう言う慧太さん
の顔は、すでにNo.1ホスト
ではなく1人の同性愛者の顔で
あたしはなんて声をかけたら
良いのかわからなかった…

