「ヨシキ!!私をあいつの所へ連れて行って!!」

「えっ?・・・・連れてけって・・・今 ドクターに止められただろう?」

「行きたいの!! あんたが 連れて行ってくれないなら 私一人でもいく!!」

そういいながら 車椅子を動かそうとすると ヨシキが 観念したように

つぶやきながら私の車椅子を押した。

「ほんとに 俺・・・諦めなくちゃいけないみたいだな・・・・」

無菌室にはガラス越しまでしかいかれないのを承知で

私はヨシキに車椅子を押してもらっていった・・・・

でも、あわただしさにくわえ、そこまでも入ることが許されない状況だった・・・・

中の様子がわからず 気をもみながら 走り回るナースの姿をぼんやりみていた。

と・・・・

疲れたような表情で 瀬川があいつの病室から出てきた。

そして まっすぐ 私の車椅子に向かって歩いてきた。

無言で 私の乗った車椅子を無菌室へと押していく。

「ど・・・・ドクター?」

あいつは どうなったの?ドクターの憔悴しきった表情と無言の威圧感に

私は恐る恐る口を開いた。

「少しだけ・・な・・・」

それだけいうと ドクターは 彼の横たわるベッドへと私の車椅子をつけた。

酸素吸入を受けながら 激しい息づかいの中で あいつが私をみて言った。

「こけたんだって??気をつけなくちゃ・・・・・」

「馬鹿ね・・・人の事心配している場合?」

「ほんとうだ・・・・」

私の返した言葉にそう答えた彼の目から涙が一筋流れた。

「一人にしたら 承知しないからね。」

私の言葉に 彼が2~3回うんうんと小さく頷いた。

「さっ・・・・行こう。」

瀬川が私の車椅子を押した。

あいつの 流した涙が気になって・・・・不安で私は 瀬川を見上げた。

「一人にしないって 言ってんだ・・・信じてやれよ」

暗い表情をしたまま 瀬川がそう言った。