「彼にとって 愛することも愛される事も 未知の世界なの・・・・
 その一歩を踏み出す勇気って 当たり前のように家族に愛されて
 育ってきた 私達と違うのよ・・・・でも、勇気をだして 踏み出した
 最初の愛情もあんなふうに裏切られた・・・」

あっこねーさんの言葉が私の胸をえぐった・・・・・

【あいつが 確信のない 命にこだわってのは そういう事だったんだ・・】

「彼ね・・・・今の仕事も 同情業だと思ってるの・・・・」

「それは どうして?」

「自分の境遇が売り物にされちゃったみたいなところがあるからね・・・・
 でも、この 身の上話 彼の所属する社長の身の上話なのよ。」

「は・・・・はぁ?」

「彼が 所属している プロダクションの社長は、亡くなった妹さんの
 旦那様なの。そうじゃなかったら、ここまで 詳しい 身の上情報でるわけ
 ないでしょ?でも、社長さんも、嫌味とかでそうしたわけじゃなかったのよ。
 天涯孤独になってしまった 彼を応援したくてね・・・
 旬は彼になつかなかったけど 彼は 自分の子供のように旬の事 愛していたから
 旬が トラウマで自分になつけない苦しみも理解してたのよ・・・・」

「でも、どうして あっこねーさん 私に・・・・」

「あの子、私に相談してきたのよ・・・・
 私が性同一性障害の話をしたの。
 そしたら、あの子 言ったわ・・・・
 俺は アッコねーさんほど 不幸じゃないかもってね・・・・
 
 愛仕方も 愛され方も知らない彼が・・・
 初めて愛した人にあんなふうに裏切られた彼が
 そう言ってもう一度 愛してみようという気持ちになれてよかったって思えた・・・・

 その相手が 由真ちゃんなら申し分ない・・・・あなた いい女だもん。」

 私がいい女・・・・それは あっこねーさん買い被りすぎだ・・・・

 「なんか 責任重大じゃない・・・・」

 「そう? 由真ちゃん あなた 旬の事 嫌い?」

 「嫌いじゃないけど・・・・」

 「好きじゃない?」

 「わからない・・・・」

 「怖いんじゃなきゃ 由真ちゃんも踏み出してみたらどうかな?」

 そう言って あっこねーさんが 私の顔を覗き込んでいた。