「美香子、今なんの途中??」



「新任紹介だってさ。」



「へぇ~。どぉせむっさいオッサンばっかでしょ。」



隣の脩二は悪ノリしたときに殴られた頬を
押さえてうずくまっていた。
そんな脩二はほっといて、私は突っ立っていた。




はあぁ~、無駄に寒いし、来るんじゃなかった。



後悔しながら、下を向き、
派手に盛った爪をこすり合わせたり、
埃を吹いたりしていた。
ちなみに、まだ脩二はうずくまっている。
仕方ないから、脩二に手を差し出してやった。



「ほらっ、立ちなよ。」




「恭子ぉ……、なんだかんだで、
俺のこと気にしてくれてんだなっ…。」



なにウルウルしてんだか…。てか、気にしてないし。
もぉ、何言っても無駄だから、手は差し出したままにして、
脩二の手が触れそうになったとき………。







「きゃあああああぁぁぁぁっっ!!!!!」



黄色い悲鳴にビックリして、私はステージを見上げた。
そのひょうしに、私は脩二から手を引いたから、
脩二はおもっきしこけていた。




ステージには、若くてスラッっとした、どこか妖しげな
男が立っていた。




か…、かっこいい……。



見とれていたそのとき、その男と目が合った。
合うとなり、妖しげに微笑むから、
私の周りの子は、私に笑ったとか、
なんとかうるさくてかなわない。


わたしも、どきっとはしたが…、それと
同じぐらい寒気もした。
体育館の寒さのせいじゃなくて、
もっと……、絡みつくような冷気が
漂っていた―――――。