紗智の家の前に着くと
「メールするね、絆」
「うん」
車を降りようとした紗智に
「今度、飲みに行くからってお父さんによろしく」
藤代先生が笑った
「家には来るな」
紗智は舌を出して車のドアを閉めた
車の中に先生とふたりきり
ザァ――――――――と
降りしきる雨の音よりも
ドクン、ドクン、ドクン
高鳴る私の胸の方が うるさい
「さて、山本の家はどこ?」
こちらを見ないで先生は訊いた
「あ、え…と」
住所とマンションの名前を告げると
「――――――はぁ!?」
先生が大きな声出して振り返った
「もう一度、言ってみ?山本」
「え?だから…」
私がもう一度 住所を告げると
「…うそ」
先生が呆然と呟いた
え?なに?
私の住所なんか変?
「…先生?」
私が首を傾げたら
「~~~~~~っ」
先生がすごく困惑した表情して
「………わかった」
ギアを入れて また車を走らせた



