こんなにビミョーなキモチなのに
6時間目が化学だったりして
白衣姿の藤代先生が
「今日は物質の構成元素……」
教科書 片手に 白いチョークで黒板に書いていく
……藤代先生の字ってすごく四角いな
先生が黒板から クルッとこっちを向くと
目が合うわけでもないのに
私は慌てて机の上の教科書に視線を落とした
ドキン、ドキン、ドキン
心臓の音が やたらと耳に響いて
隣の席の子に
私の心臓の音 聞こえてるんじゃないかって
心配になって
チラッと隣を向くと
黒い学ランの男子は
眠たそうにシャーペンを回してた
もう少しで
チャイムが鳴りそうな時
「来週、元素記号のテストするからな。
しっかり覚えてくるように」
先生の言葉に
え―――――――とか
げ―――――――とか
ざわめきが 起きて
チャイムが鳴る
礼をしながら
………元素記号 必死に覚えよう
絶対 化学だけは100点とりたい
皆が教科書をカバンにしまい始めて
先生は教壇の上を片付けながら
「あ、そうだ
高野!山本!」
思い出したように私ともう一人 女子の名前を呼んだ



