引っ越しの2日前にお母さんが来てくれて
約1年ぶりの再会に玄関で抱きあってしまった。
お母さんに抱きしめてもらうなんて子供の時以来かな?
柔らかく温かいお母さんの肩に顔を埋めてそう思った。
リビングのソファーに
座ってもらって
「疲れたでしょう?お母さん。
今、お茶いれるから」
キッチンでお湯を沸かすと
荷物はほとんど段ボールに片付いた部屋を見渡しながらお母さんが
「もう、だいたい片付いてるのね。えらい、えらい」
「うん。だいたいね」
久しぶりの日本だから緑茶がいいかな(ティーパックのしかないけど)
湯呑み茶碗にお湯を注いでると
リビングのお母さんから
刺さりそうなくらいの視線を感じて
「なぁに?あんまり見られるとイヤなんですけど」
唇を軽くとがらせ抗議する
お母さんは頬に手をあて
感慨深そうに呟いた
「たった1年でこんなに成長するのかしら」
「え?身長も体重もそんなに変わってないよ」
湯呑みを持ってキッチンを出てリビングのテーブルに「どうぞ」と置き
お母さんの隣に座ると
「身長とかじゃなくて」
お母さんが私の頬を両手で包み
「……顔、かしら?
大人っぽくなったっていうか
う~ん…………
女の子らしくなったわね」
かなり恥ずかしくなって
「何よぅ。前の私は女の子じゃなかったっていうの?」
ぶっきらぼうに返したけど
お母さん
私、恋をしたんだよ。
とっても とっても
いい恋をしたからだよ
……な~んて、照れくさいことは絶対に秘密だけどね。



