泣かないように
フロントガラスの向こうに広がる闇を見つめた
今は真っ暗でも
時間が過ぎれば、また
あの闇を照らす光が
朝は必ず来る
「新しい生活が楽しみなんて
何年ぶりかなぁ?
こんな歳になって少し恥ずかしいけど」
「歳なんて関係ないよ、先生
新しく来る明日が楽しみなんて素敵じゃない
そうやって生きていければ
幸せだよ」
「………うん。
絆も来週だっけ?引っ越し」
「はい」
「がんばってな」
「はい」
「今まで本当にありがとう」
泣いたらダメ
泣いたらダメ
喜んで笑って私
「オレはきっと
ずっと、あの場所で
絆を待ってたのかもな……」
その言葉を聞けただけで充分だ
私の恋も報われる
「先生、幸せになってね」
心の底から言えた
幸せに
幸せになってほしい
「絆もね」
そう言った先生の表情は
とても優しかった



