「絆がいてくれたから
新しい朝が楽しみになったよ」
先生は一度そこで言葉を切り
「だから、絆」
「オレは春から新しい場所で新しい生活を始める」
「………新しい場所?」
「うん。
高校に異動願いを出した。
来年度からは違う街、違う高校で働く」
今の高校は結が通ってた高校
今の家は結と暮らしてた家
先生は やっと外に出るんだ
良かったなぁ……
本当に良かった
「絆が言うように、すぐ、また誰か恋人を作ろうなんて
そこまで考えられないけど
………そうだな。
定年退職して隠居する頃には
茶飲み友達っていうの?
ガールフレンドの1人でも作ろうかなって気持ちにはなったよ」
何年も何年も経って
先生が定年退職して
おじいちゃんになって
縁側で
お茶をすする姿を想像した
おじいちゃんになった先生の
隣で笑うのは…………
私では なかった
「そうだよ、先生。
ひとりぼっちの老後は辛いよ。
一緒にお茶してくれる
可愛いおばあちゃん
捕まえないとね」
哀しくて哀しくて
胸は押し潰されそうに苦しくて
泣き出しそうなのに
それ以上に良かったと思えた
先生が自分の幸せを
やっと考えられたんだ
先生は もう大丈夫
彼の時間が止まることは
もうないだろう。



