結局、カラオケは お腹が痛くなったと言って途中で抜けた
カラオケ店を出ると、冷たい風が吹き抜けて
空にはグレーの重たい雲が垂れ込めていた
駅に向かって道を歩くと寒さで耳がジンジン痛くなって
風から守るために耳をふさいだ手も指先が かじかんでた
駅に近づくにつれて すれ違う人も増えて行く
はぁ……吐いたと白い息が消えていくのを見て うつむくと
ドンッ!
すれ違い様、人と肩が思いきりぶつかり
振り向きながら「すみません」と頭を下げた
ぶつかった黒いコートを着た若い女性も「ごめんなさい」と頭を下げ
持っていた荷物を大切そうに抱きしめ足早に通りすぎる
抱きしめた荷物は綺麗にラッピングされたクリスマスプレゼントのようだった
私は そこに立ち尽くし 黒いコートの背中が消えた道の先を じっと見つめた。
今日はクリスマスイヴだ
毎年 忘れたことなんてないのに
今まで忘れてた
今日はクリスマスイヴ
目の前にふわふわした物が落ちて行ったから
空を見上げた
グレーの雲から
舞い降りる白い雪
アスファルトに落ちると
すぅ…っと溶けて消える
儚い初雪だ
すぐ消える とても儚い でも
人の心を動かす
白い ふわふわ
家に帰る前に 少し寄り道をすることにした



