風邪をひいて
少し
気が弱ってたのかも知れない
紗智の言う通りだった
いくらでも誤魔化す方法はあったはずなんだ
全てを話す必要は
どこにもなかった
オレはただ絆に話を聞いて欲しかったのかも知れない
「紗智、玄関じゃなんだし
中でお茶でも」
「いい。今、私、柊ちゃんのこと殴りたいくらいムカついてる」
「………そう」
「泣き疲れて眠った絆を放ってきたし
もう絆のところに戻るよ」
「紗智」
「ん?」
「絆のこと、頼むな」
「頼む」って
紗智に深く頭を下げると
紗智は少し言いにくそうに
「柊ちゃん。宇佐美先輩のこと」
「………宇佐美はオレのクラスだから、イヤでも目につく。
アイツ、彼女作ったな」
「…………柊ちゃん。
宇佐美先輩は
本当に絆が好きだったよ」
「…………うん」
「絆には宇佐美先輩がいいって私 思ってた」
「うん」
「絆。
ひとりになっちゃったよ?」
「…紗智がいてくれるだろう?」
「バカじゃん?
私だって彼氏できるのに」
「なんだよ。まだ早いよ
紗智に彼氏できたらお父さんと一緒にオレも泣くぞ」
こんな小さい時から知ってんだからって両手で赤ちゃんくらいの大きさを示すと
「うざっ」て本当に気持ち悪い物を見るような目でオレを見て
思春期の娘を持った父親の気分になった



