「じゃ、お言葉に甘えて」
私がそう言うと
「はい」
先生は嬉しそうにお弁当を私の前に出した
卵焼きを一口 食べると
「スッゴクおいしいっ!」
私の大好きな甘い卵焼きだった
藤代先生は「だろ?」って得意気に笑ってる
この人 いつも笑ってるなぁ…
「ねぇ、山本………」
「はい?」
サンドイッチをかじりながら
藤代先生は少し訊きにくそうに
「山本の両親ってちゃんと一緒に暮らしてる…よな?……」
あれ?先生なんで両親の話?
私が毎日コンビニのサンドイッチだから?
「いいえ。私、1人ですよ?」
「…………え?じゃ、施設に入ってる…とか?」
先生が
すごい哀しそうな顔をした
「違いますよ」
私はブンブン手を振って否定して
「一緒に住んでいないだけです」
「え?」
「この春、父がドイツに転勤になって母も一緒に……
私はドイツなんて無理だから1人暮らししてるんです」
「………あ、そうか……
そっか………両親とは仲良くしているかい?」
「フツーですよ?」
私の答えに
「そっか、フツーか」
先生は安心したように
またサンドイッチを食べた



