『この部屋に入ってはいけない』
それは 結の遺影を見られたくなかったからじゃなく
この部屋は
先生の心の中なんじゃないかな
だから先生は 私に
時間が止まった
自分と結、
ふたりきりの心の中に
誰にも入って来て欲しくなかったから――――――――――
「その子はね、絆ちゃんだよ」
「え?」
私の腕に抱かれたテディベアを優しい目で見つめ
ベッドに横になってた先生は
よいしょと上半身を起こし
私は
大丈夫ですか?って駆け寄り手を差し出す
大丈夫って私の手を制し
隣に座るように促した
先生の隣に座ると
古いダブルベッドはギシッと大きな音をたてて軋んだ
私のひざの上の丸い目が可愛いテディベアを先生は撫で
「この子は絆ちゃん。
結の20歳の誕生日………
最後のバースデープレゼント」
絆
それは私と同じ名前………
「生まれてくるはずだった
オレと結の子供の名前………」
それから先生は
痛いだろうのどを気にも止めず
話し出す



