結局、先生は扁桃腺が腫れた風邪でインフルエンザではなかった
点滴を一つしてもらってる間
ベッドに横になった先生は
隣に座る私に
「山本………」って
何かを言いかける
後悔と哀しみと不安が
入り交じったような先生の目は
私の胸を締め付けて
「山本、オレ…」
「先生、水分取った方がいいよ」
カタンと椅子から立ち上がり
「ポカリでいいですか?」
って笑って訊いた
「水分なら、今取ってる」
先生が点滴を指差したけど
「知らないの?
口から取った方が
回復早いんだよ?
……待っててね、先生
今、買ってくるね」
背中に先生の視線を感じながら
ベッドが並ぶ点滴室から出た
廊下を行く足は
自然と速度を増して
エスカレーターのそばに
自販機があったけど
少し遠い
売店まで行くことにした
売店の棚と棚の狭い通路
病衣姿の入院患者さんや
外来患者さんとすれ違いながら
まだ点滴が終わるまで
1時間以上ある………
飲み物とのど越しの良さそうなヨーグルト、週刊誌を買った
週刊誌は暇つぶしと言うより
先生に話しかけられないように



