病院に着いてすぐ
正面玄関に置かれた
マスクの自販機で
先生はマスクを買って
私に差し出した
「もう手遅れかもな」って苦笑いしながら
二人でマスクをつけながら
先生の風邪なら
1番にうつされたいです
ってバカなことを思って
「私が寝込んだら、
先生、看病してね」
重たくならないように
明るく言った
「はいはい」って掠れた声でうなずきながら
先生はロビーに向かい
私はそのダルそうな背中に
手を添えて歩いた
内科で問診票を出すと
やっぱり
インフルエンザを疑われて
待合室の奥の別室で
待つように言われる
先生は
「山本、キミは帰りなさい
やっぱり、うつる……」
「もう手遅れですよ
最後まで先生のそばにいる」
「でもな………」って
困ったように頭をかいて
ふと私の後ろに視線をやった
先生の目が凍りついた
「先生?どうしたの」
って言いながら
私は先生の視線の先を
振り返る
そこには四角い眼鏡をした
年配の医師が驚いた表情で
立ち尽くしてた―――――――――――



