のぞき なんて しないも~ん
一人残されたリビングを見渡す
チェストで視線が止まり
伏せられた写真たてを
起こしてみたい
そんな衝動に駈られる
写真たてを起こしてはいけない
先生は そう言わなかったよね
チェストの前に立ち
写真たてに ゆっくり手を伸ばす
ドキドキドキドキ
先生の奥さんは
どんな美人なんだろう?
きっと花のように
可愛い人だよね?
――――――だけど
写真たてに手を触れた時
じぃ~っと視線を感じて
振り返る
テディベアだ
ソファーから
私をじぃっと見てる
まるで非難してるみたい
「はいはい。
こっそり見るのはダメだよね?」
テディベアに諭されて?
ソファーに座った時
着替えた先生が
部屋から出てきた
財布と鍵を上着に入れながら
「山本、一人で大丈夫だから
キミは学校に戻りなさい……」
掠れた その力ない声の
どこが大丈夫なんだろう?
「いや。私もついて行きます
そんな いつ倒れてしまうか わからない先生を一人に出来ないよ」
先生は口を開いて
何かを言いかけたけど
「はぁ」って ため息ついて
「キミに迷惑かけるようになっちゃ おしまいだな、オレも」
「困った時はお互い様です
さ、行きましょうか」
心底、自分が情けないって顔した先生と一緒に家を出た



