…………絆
オレ、あの時
『絆』って言ったのか?
よく覚えてないんだ
だって、この子が危ない時は考えるよりも身体が先に動く
これは もう本能だ
この子を守りたいっていう本能
仕方のない事なんだよ
でも
咄嗟の時にオレは『結』ではなく『絆』って呼んだの?
「藤代先生!」
宇佐美の
苛立った声にハッとする
キッとオレをにらんで
「先生、なんで『絆』って……」
「『絆』なんて言ってないよ」
オレはケロリと答えた
宇佐美がムッとして
「だって体育館中、響く声で…」
「『絆』じゃなくて『傷は?』って訊いたんだよ」
「え?」
「頭に傷が出来てるんじゃないかって………
第一、自分のクラスの生徒じゃないのに下の名前まで覚えてないよ
山本って『絆』って名前なの?」
苦しい言い訳でも
頭に血が上ってる宇佐美の今の状態なら
軽く騙せるだろう
「な、なんだ。聞き間違い?」
オレは宇佐美の言葉に笑ってうなずいた



