中学3年の冬



急に父の海外赴任が決まって




「絆(キズナ)どうする?」



お母さんは困った顔して訊いた




「どうする…って」



ダイニングテーブルにお父さん、お母さんと向かい合って




「お母さんはね、お父さんに付いて行くわ」



「う…ん」



「絆は?」



私はチラッとお父さんとお母さんの顔を見てから




「私は日本に残りたい」



だって急にドイツで生活なんて 無理だもん




「そう」



お母さんは
深いため息をついてから



「じゃあ、絆は叔母さんがいるS市で暮らしなさい」



「え?」



S市?


このまま
ここに暮らしちゃダメなの?



「ここには頼れる親戚もいないし
S市の宇佐美の叔母さんなら
絆の面倒も見てくれるから」



「はぁ」



「ただ宇佐美の家には修一(シュウイチ)がいるし」



修一


修ちゃんは私の2つ上の従兄弟



「宇佐美の家の近くでお部屋借りる事になるけど」