「不倫って、そんなにいけないことなのかな」

ガラス越しに通りを眺めながら恭平が唐突につぶやいた。

学校の帰り道。

俺と恭平と、タシロと、村上の
いつものメンバーでガストに立ち寄り、
この後雀荘に行こうかどうしようか
話している時のことだった。


話にも加わらず
どこか浮かない顔でいた恭平が
突然口を開いたと思ったら
「ふりん」だ?


「不倫って、恭平
おまえ人妻と付き合ってんのか?
やめとけやめとけ。
俺も経験あるけどさ
最後は滅茶苦茶になるぜ」


タシロが自嘲気味に笑う。


初耳だったがタシロならありうる。

整った顔立ちに
「来るものは拒まず」の精神でいるタシロは
やりチンで有名だった。

初体験が小学5年生。


まだ19だというのに
100人切りも間近だというのだから羨ましい。
それでも憎めないのは
同い年でありながら、どこか兄貴分のような逞しさを感じるからだ。
友達想いのところもある。


恭平は、タシロの忠告を聞いているのかいないのか
外を眺めたまま火を点けないマルボロをもてあそぶ様に
ずっと指に挟んでいる。