お兄ちゃんの気持ち

電話するって言ったよな。

自分で連絡先を登録したけど、予想外な展開に少しだけ顔がにやけてしまう。

今夜はカナコも居ないし、ゆっくりできそうだ。

会社へ戻ると午前中席を外していた分の仕事が山のように待っていて。

…今夜は残業になりそうだな。

コーヒーを淹れながら書類をチェックしていると、いつの間に来たのか同じ部署の若い女の子がそばにいて。

「浅野課長、何かいいことありました?」

「え?」

「なんだか、うれしそうですよ」

溜まったカップ類を洗いながら、そんな事を言って笑う彼女に、思わず自分の頬を触ってしまった。

「やだ、本当にいいことがあったんですか?よかったですねー」

洗い物を終えて出ていく彼女に、そんなに顔に出ていたんだとびっくりしてしまう。

なんだか恥ずかしくて、コーヒーを入れた後もなかなか給湯室から出ることが出来なかった。