お兄ちゃんの気持ち

彼女の作りたてのランチは、なかなかのボリュームがあっておいしい。

常連客に女性だけじゃなく男性が多いのは、料理だけじゃなくて彼女に魅力があるからかもしれない。

そんな風に思ったのは、2回目にこのお店へ来た時。

初めてランチへ来たのは、同じ部署の後輩の女の子を連れて来た時だった。

俺たち以外は男性客しかいなくて、しきりに彼女を口説いているサラリーマンが居たのをはっきりと覚えていたから。

なんとなく忙しそうにしている彼女を見ることが出来なくて、黙々と料理を食べる。

…おいしいな。

食べ終わってお金を用意していると、俺の前に椎名さんがやってきて。

「ねえ、連絡先、聞いてもいい?」

小さな声で俺に問いかけて来た彼女が、ほんのり頬を赤く染めていたのは気のせいじゃないはず。

「え、ああ、携帯かして」

ほかのお客さんの目を気にしながらも、彼女から受け取った携帯を操作して赤外線通信で俺の連絡先を登録して返した。

「夜に電話するね」

俺からお金と携帯を受けとった椎名さんは、小さな声でそういうと「ありがとうございました」といつもの元気な声で俺を店から送り出してくれた。