傷が癒えるまでの間、
普通にバーの仕事をこなした。

その間に繭には
会うことはなかった。

どこかのホテルで缶詰なのか?
今忙しいのかな?
やっぱり僕のこと怒ってる?

売りをやる前、
僕は嫉妬にかられ
繭にひどいことを言った。

『繭ってさ、人を本気で
好きになったことある?
ないよね?
それともあったけど・・・
って感じなの?』

「だったら何?」
繭はどっちでも取れる返事をする。

繭の目を見ても答えは
見つからない・・・
僕が黙ってると

「じゃあ稜にとって
本気で人を好きになるって
どう言うことなの?」
と逆に聞き返されてしまった。

『・・・僕にとっては、
自分のことより
その相手のことを一番に
考えることかな?』

今、考えると僕は繭に
自分の感情を押し付けて
いただけだとわかった。

「ふ~ん。でもその相手に
その気持ちが届かないと
その想いは無駄だね」
と繭が冷たい目で僕を見た。

奈央さんのことを否定された
気がしたのか・・・
繭から言われたことに
傷ついたからか僕は自然と
涙がでてしまった。

繭には奈央さんのことを
話していない・・・

繭はただ僕の言ったことに
傷ついたんだ。
だからあんな言い方をした
だけなのに・・・

でも繭は僕に謝ってくれた。