僕は汗を掻くのが嫌いだ。

暑苦しいのが嫌い。

一生懸命な人を格好悪いと
思っていた。


なのに今の僕は、

季節は秋だというのに
額に汗を掻いてる。

ダサ・・・

ロンTの袖をひっぱり汗を拭う。

軽く息を調え、店の中に入った。



奥の窓際の席に繭さんがいた。

『すみません、遅れて』

僕はこの人に何回謝るのだろう?



彼の表情を伺うと、


あれ?

怒ってない・・・?

むしろ何か笑ってない?



「とりあえず座らない?」

立ったままの僕に声をかける
彼の目は何だか優しい。

イスに座り、アイスコーヒーを
オーダーした後、
目の前に置かれた水を
一気に飲み干した。

「ここ、稜の奢りだからね」
と悪戯っぽく笑う。

稜・・・って

『あの、繭さん・・?』

「稜ってば、散々
オレのこと呼び捨てにしといて
今さらさん付けするの?」

と意味深な笑みを浮かべる
その顔は、僕のあの日の
行動を指しているのだろうと
わかるけど・・・

今さら聞けない。

ていうか、何をしたのか
聞くのが怖かった。


繭さん?繭?って、
悩んだ理由もわかった。


すでに呼び捨てにしてたわけだ・・・