僕が今までこんなに
必死で走ったことって・・・

あっ、1回ある・・・
奈央さん追っかけた時だ。


でも状況が違う。


僕は繭さんと約束を
してたらしい・・・

記憶がないのは怖いこと
だと思った。

携帯番号は僕が繭さんの
携帯から自分にかけて、
自分で登録したらしい。

『ハァ~・・・しんど・・・』
歩道橋の階段の途中で足が止まる。

家から慌しく準備を
済ませて出てきた僕は
タクシーを止め、
約束の場所に急いだ。

事故のための渋滞にはまり、
タクシーを降りて走っていた。


電車の方が早かったんじゃ・・・?

後、少し・・・


「・・・覚えてないの?」
繭さんの声のトーンが下がった。

残念がるというより
呆れてる・・・?

僕は平謝りをして、
近くのコーヒーショップで
待ってくれるようお願いした。


覚えていない約束のために?

記憶を埋めるために?


1回目は偶然
2回目も偶然
3回偶然が重なると運命だと
奈央さんは言ってた。

でも運命なんてそう
簡単に転がってないから
とりあえず私は動くと・・・

歩道橋の手すりに手をかけ
勢いをつけ一気に駆け上がり
休まずコーヒーショップまで
走った。