『誰かと思ったら音緒に…』そう零れるように無意識に縁が口にした言葉に,俺はやはり間違いじゃないと信じざるを得なかった


おかあさんが青ざめていたのは俺がこの場に居合わせてしまったことに対してだった



「中に入ろ−ぜ
 俺すっげぇ寒いんだけど!」


ズシッと背中に重いモノが乗っかる



「おう」


縁のさりげない優しさに,涙が出そうになる


縁がいるから,俺は曲がることなく,膝をつくことなく,きちんと立っていられるんだ





「話…聞く?」


おかあさんの部屋でお茶を出してもらい向き合う


怒鳴り声がしていた割には部屋の中は荒れてはいなかった



「いや…前に聞いたのがおかあさんの知ってることだろ?
 だったらいいよ
 それより落ち着いてほしいな
 顔色,まだ良くないよ」


「音緒…また一段と強くなったわね?」


「今回ばかりは縁がいるからだよ
 一人だったら…塞ぎ込んでた」


普段は思ってる通り口にすることなんてないからおかあさんは驚き,縁は照れながら俺のお茶を飲み干した