「みんな食堂に行くかっ」


何人かは“自分の父親じゃないか”という不安に怯え,顔を真っ青にし震えていた


俺が思ったことと同じことを思ったからだと思う


ここはこいつらのたった一つの居場所なんだ


もしあんなやつのせいで他の子に危害が及んだら?


ここに居づらくなってしまう


俺にしてやれることはみんなを両方の意味で安全なところに移動させることだ


まだ反抗期のやつはいなくてスムーズに移動出来た


奈緒子には食堂に残ってもらい,俺は縁もいる部屋の前へと戻る



「どうだ?」


「変わってない
 結構かっこよくて笑った顔もいい人っぽかったんだけど…やっぱ人って見かけによらねぇな」


「縁がそこまで言うなんて珍しいな
 そんなよさ気な人だったのか?」


俺の問い掛けに縁は腕を組んで考え込む



「ん−何ていうか誰かに似てたんだ
 雰囲気がさ」



バタンッ


大きな音を立ててだが,部屋のドアがやっと開く


そして縁の言っていたスーツを着た男が出てきた