多分縁の帰りを待ってるんだと思う


奈緒子は部屋でじっと縁が帰って来た音を聞くまで起きてるんだ


何時になろうともずっと……



「どうかしたのかな?」


施設の門を潜ると真正面に見えるおかあさんの部屋の周りに,施設の子供達が集まっていた


近付いてみると,部屋の中から怒鳴り声のようなものが聞こえてきた


一瞬縁かと思ったが,集団の中に縁はいた



「あっ兄ちゃん!」


俺に気付いた子供達がわらわらと寄ってくる


みんなは『おかえり』と言ってくれたが,こんな状況だ,表情は固い


縁は俺に視線だけ向けると手招きした


子供達に一声かけ,縁の元へ



「何があってんだ?」


「よく分かんね
 スーツ着た男が来てからこれだ
 聞こえる限りでは誰かの父親だと思うけど」


『息子を出せ』や『俺は父親だ』と怒鳴り散らしているらしい


施設に預けておいて何都合のいいこと言ってんだか


正直こんな父親はアイツを連想させて嫌だ