star dust

俺は逃げるように待合室を離れたあと初音の病室の前まで来たが,入ることが出来ず,ドアの前で立ち尽くしていた


軽い病気だと思っていた,いや思っていたかった


あんなに元気なのに


眩しいくらいの笑顔を見せてくれるのに



「音緒くん?」


いきなり肩に触れられ驚いて辺りを見渡すとそこには“ゆうさん”の姿があった



「あっごめん,驚かせちゃったね
 …どうしたの?」


心配してくれるゆうさんにも愛想笑いを返すことしか出来なかった


何かを察したのか微笑み,俺の頭を撫でた



「初音ちゃんの前では笑顔でいてあげてね?」


そう言ってゆうさんは自分の病室へと戻っていった


たったその一言に俺は…助けられた


病気の事を知ったからって態度が変わるのはおかしいよな


初音は“初音”なんだから



「わりぃ,少し遅れ…」


「ハッピーバースデ-音緒ちゃんっ」


ドアを開けるといつもの『音緒ちゃん!?』ではなく祝いの言葉だった


もしかして誕生日だって知ってたから発作が起こったのに…?