star dust

“思ったよりいいやつ”はおまえだよ葵


病院への電車の中で俺は葵の話を思い出していた




妹の遊は生まれつき病弱だったから,ずっと母親が付きっきりで葵は放置


父親は仕事人だったため葵にも遊にも無関心


親…特に母親との思い出はないらしい


『家の中での俺は異物だった』と無表情で言っていた


3年前に遊が死んだとき,悲しみに耐えられなかった母親は…よく似ていた葵を身代わりにすることで,立ち直ったらしい


それまでは葵に無関心だった父親だが,これは流石に母親を説得したが意味はなく…


結局今までずっと遊として過ごしてきたと



『俺が遊になってすぐに母親は土日以外病院で療養することになったから普段は葵
 親父がすっげぇ協力してくれてるから楽だし,思い出がなくても母親だから』


嘘でも,引き攣ってても笑顔でそう言えた葵は強いと心の底から思った


静の好きな奴って理由だけで嫌いだった


けど尊敬する,いいやつだと思った


俺たちに必要な輝きを持ってる


『これから音緒って呼ぶから葵って呼べよ!!』


駅までの道のり,照れ臭そうに葵がそう言うから…俺まで照れたんだけど