star dust

初音はしばらく黙り込み,小さな声で何かを言った


それは聞き取れず,俺はもう一度言うように言った



「外に行ってみたい」


はっきりと聞き取れた言葉とともに見えた表情には,昔の俺と同じ諦めが滲み出ていた


気付いた時には遅かった


初音の願いには,俺が叶えられるものはないんだと


けど俺は言ったんだ


『叶える』と



「分かった
 あっ…俺,縁に電話してくるからその間に母さんと一緒に携帯の初期設定終わらせておけよ」


この時の俺は凄かったと思う


初音のためだから出来たんじゃないかと思うくらい有り得ない事をしたんだ



「すみません」


ナースステーションで看護師さんにある場所を聞き,言われた通りの場所に向かう


幸い,関係者に会うこともなく目的地に着いた


気持ちが高ぶっていたのか,俺は本当に何も考えずにある部屋の扉をノックした


中からの返事に『失礼します』と入っていく



「お話があります
 日下部院長」


そう,一番偉い人の場所へ