「それから俺は少しずつだけど人を信じられるようになったんだ」


初音はずっと黙って頷きながら話を聞いてくれていた


話を終えると初音は『ありがとう』とふわっと笑い言った


でも一瞬,表情に影を落としたのを見逃さなかった



「どうした?」


「えっ…
 音緒ちゃんに隠し事って出来ないね」


そう言って苦笑いし,話してくれた



「ただ羨ましいなと思っただけだよ
 私はここから出たことがないからそんな…友達なんていないもの」


驚いた
初音に友達がいないなんて思わなかった


だってこの病棟には子供もたくさんいる


もちろん初音と同い年の子だっているのに


初音だったらすぐに友達になれるはずなのに


けどそれは俺が考えてたよりずっと……だと,分かるのはもう少し先の話


この時の俺のしたこと,間違ってなかったよな…??



「それなら今度縁連れてきてやるよ」


「えっ本当!?」


キラキラと目を輝かせる初音に俺は笑顔で頷く


けど…この発言のせいで,初音が避けてきた“関わり”を


俺は繋いでしまう


やっぱりあの時の俺は間違っていましたか…??