施設に入る前は,毎日が悪夢でしかなかったからだろうか


毎日,今日は父さんの機嫌はいいだろうか

家に入ってもいいだろうか

殴られないだろうか


いつも怯えていた


母さんのことは…正直思い出せない


一つだけ覚えているのは,あの日,父さんがいなくなった時のことだけ


それからしばらくして施設に入ったんだ


怯えて生活することもなく,縁たちもいて幸せだった…



「音緒っ
 クリスマスは遊園地行こうぜ!」


クリスマス目前に縁の口から出た言葉は,実現しないであろうものだった


子供の戯言…そう思うことが出来なかった


出来るはずもないことを言うな,そう思うことしか出来なかった



「無理だろ」


「大丈夫だって!
 約束なっ」


“約束”この言葉に俺は何かが切れた


守ってもらったことのない約束


約束を守ってもらえるだろうと期待し,裏切られたあの頃がフラッシュバックする


どうせ守る気もないくせに


約束なんて口にするな