「おかあさんから地図もらったでしょ?
 残念だけどそこには結さんはいなかった
 手紙を渡しに来てすぐ引っ越したみたい」


淡々と言葉を繋いでいく奈緒子が泣くのを我慢していることに,俺も縁も気付いていた



「でもこの辺からあまり遠くには行ってない気がするんだ
 だから探そうよ
 縁も結さんも会いたいんだから」


「そうだよな
 探そう縁
 俺も手伝うからさ」


見つかるという確信はなかったけど,見付けたいって願いはあった


縁は『ば−か』と小さく呟き,あのいつもの憎たらしい笑みで言った



「お前らちゃんと探せよなっ
 頼りないけど一人よりマシだ」


これが照れ隠しだって分かってる俺たちだからこそ,縁の姉貴を探してやれる


“坂上結”“美人”“22歳”たったこれだけの情報しかないけど…大丈夫だ


俺達なら見付けられる


施設に戻る前にファミレスで探す地域を決めた


奈緒子は施設周辺,縁は学校周辺,俺は初音のいる病院周辺


帰りはちゃんと奈緒子を送り,俺達は家路についた