「俺も施設に行くわ」


「初音は?」


ちゃっかり呼び捨てにしてて少しむっとしたけど質問には答えておく


『ふ−ん』と興味なさげに縁は窓の外へと視線をやった


にしても別に母さんは病院にいるわけだから見舞いに行くくらいいいと思う


まぁ初音には言ってるって言うから何も言わないけど



「降りるよ音緒」


ボーッとしていた俺の後頭部を叩き,面倒臭そうに足を進める縁


やり返そうと思ったけど…俺は大人なんだと言い聞かせなんとか堪えた



「あ−久々」


電車を降りてから繰り返されるこの言葉


俺は2ヶ月ほど前に来たけど縁はしばらく行ってないらしい



「音緒!
 …とゆんちゃん!?」


「あっ奈緒子」


施設が見えて来た時,この間同様後ろから奈緒子に声をかけられた


縁の纏ってる空気が一瞬にして変わる



「ゆんちゃんって呼ぶなって何回言わせるんだよ」


「うるさいな−
 ほら早く中入って!」


ぐいっと腕を捕まれた俺達は連行されるように施設に足を踏み入れた