「じゃあ明日な」


そう言って手を振り病室を後にした俺は母さんの家でもマンションでもなく別のどこかへと向かう



今日初めて髪を弄ったから編みこみの前に三編みすら知らないし,お団子?とかどうやったらあんな風に丸くなるのか分からないわけで


明日のために予習でもしようと思い本屋に寄った


…のだが全く探し方が分からなくて,来てしばらく経つがずっと徘徊しているだけだ



店員に聞けばいいんだよな


そうやっと気付いた俺は,近くに本棚の下の引き出しを開け在庫確認をしているふうの男の人に声をかけた




「すみません,ヘアメイクの本とかってどこにあるか分かりますか?」



「あ−すいませんけど俺店員じゃないんで…す……よ??」



『店員じゃない』と言われ,じゃあ本屋の在庫ひっくり返して何をやっているんだと言いたくなったのだが,段々と語尾が小さくなっていく男の声をどこかで聞いたような気がして顔が引き攣る



そう聞いたんだ



つい最近…あそこで




「うおっ偶然だな音緒
 つ−か運命かもよ?」



そんな運命いらね−んだよ






糞親父