star dust

「初音は妹みたいなんだよな−」


「縁くんがお兄ちゃんだと楽しそうね!
 私には“お姉ちゃん”がいるけど…ね,音緒ちゃんっ」



病室に着いてからやっと初音が俺の名前を呼んだことに内心ムッとしながらも“お姉ちゃん”の存在を探る



初音のお姉ちゃんと聞いて浮かぶのはたった一人…あの人しかいないはず




「初音に姉貴いんの!?
 絶対美人だろっ」


「血は繋がってないんだけどね?
 顔がそっくりだってみんなが言ってて看護士さん達から姉妹ってことにしなよって言われたんだよ−!
 私,ゆうちゃんのこと大好きだから嬉しいんだ!!」



ほんの数秒前まで冗談混じりに『紹介しろ』などと言いハイテンションだった縁は,“ゆう”と姉と同じ名前を聞いた途端,サーッと色彩を失っていった



すぐに異変に気付いた初音は,今にも発作を起こしてしまいそうだと俺が思うくらい様子がおかしくなる



無理矢理にでも連れて来るんじゃなかったと後悔し,呆然としている縁を力任せに初音から離し,初音を横からそっと抱きしめる



呼吸が乱れ始め苦しいのか俺にギュッとしがみついている




「大丈夫,初音のせいじゃないから
 知り合いの名前が出たから動揺してるだけだよ」



一定の間隔で背中をポンポンッと叩いている内に乱れていた呼吸は元に戻ったが,初音は俺から離れようとはしなかった



サイドテーブルにおいてあったタオルで汗を拭いてやると,力無く『ありがとう』と眉を下げて笑った