star dust

それから電車に乗るまで,いや電車に乗ってからもしばらく俺達の間に会話というものはなかった




「俺はいいと思う」



何の脈略もない言葉だったが沈黙を破ったのは縁だった



そっと縁に目をやると,いつものふざけた様子はなく,真剣な面持ちで淡々と言葉を続ける




「静が好き,だけど初音も大切なんだろ?
 別にいいんじゃね−の
 まだ答えを出す必要も,気持ちに気付かないふりする必要もないと俺は思う」



縁に全部心の中を暴かれてしまったからか,スーッと体が軽くなった気がした




「だいたいお前は考え過ぎなんだよ,ば−か」



ニシッと笑った縁に,俺は今日何度目かの素直さを発揮し『さんきゅ−』と呟いた







「あ−!
 縁くん久しぶりだねっ」


今日何度も縁に救われた…けどこの光景だけは苛々してしまうから早く,というか今すぐ帰ってほしい



『俺に会えなくて淋しかったか−?』と初音の頭を撫でる縁に対してどうしようもなくムカついたが,ここでキレてしまってはただの馬鹿としか思えなかったため全力で堪えた



そんな俺に気付いているらしく,わざとらしく俺を見てにんまりすると,初音との距離を縮める