star dust

「縁どっか行くの?」



一瞬嫌な予感がしたが,それを振り払うように疑問を口にする



にっこり笑った縁の口からは,俺の思い描いていた最も残念な言葉が楽しそうな声色で返ってきた




「初音に会いに行くんだよ?」



“だよ?”と首を傾げてかわいこぶるのが顔は悪くないため違和感がない



むしろ女にキャーと騒がれていた気がする




「音緒,急ぐんなら後ろ乗れ」


「着いて来るなら当たり前だろ」



勢いよく後ろに乗ると自転車が倒れかけたが何とか縁が立て直したが,恨めしげに睨まれるが気にしない



チッと舌打ちをしながらも黙って自転車を漕いで駅まで向かう



しばらくしてやけに縁が静かだなと思ったのもつかの間,前から『なぁ』と呼びかけられた




「ん?」


「お前さ−初音が大事か?」



思いがけない問い掛けに,悔しいが言葉を紡ぐことが出来なかった



言い訳を考えていたわけでもなく,はぐらかそうとしたわけでもなく,頭の中を色々な事がぐるぐると回っていた




「早く降りれば?」



頭を叩かれて我に返ると,縁の姿は目の前ではなく左側にあり,駅に着いたことを知らされた