「愛子さん、お薦めの……」

「だからアナタに薦めるお茶などありません」

ぷいっと私は横を向いた

「聖一郎様、私が選びますわ」

冴子が有栖川にウインクをして、冷蔵コーナーの一角に立った

短いスカートから見える白い足を組んで、お茶を眺めている

有栖川は冴子から視線を外すと、懐から小さなメモ用紙を出した

「僕のアドレスです」

「いりません」

有栖川が差し出したメモ用紙を私は突っ返した

「受けとってください
困ったことがあったら、僕に連絡を
いつでも愛子さんのお力になりますので…」

有栖川は、私の制服のポケットにメモ用紙を突っ込んだ

軽く会釈をすると、有栖川が冴子のもとへと歩いていく

「飯島さん、僕は先に車に戻っていますね」

「ええ、そうしてください
聖一郎さんがこんなところにいるなんて…似合いませんから」

『こんなところ』?

よく言うわよ

私を馬鹿にしたいだけでしょ?

貧乏暮らしをしている私を見て、笑いたいだけ

どんな生活をしているのか…

どんな惨めな顔をしているのか…