「聖一郎様、そろそろお時間が…」

コンビニの中に、真っ赤なスーツを着ている女性が手帳を片手に入ってきた

飯島冴子(いいじま さえこ)だわ

有栖川の全てをコントールしている女

影で有栖川を支配している…なんて囁かれている

確かに敏腕で、機転のきく女性だけど…私は嫌い

有栖川家にいる人間はみんな嫌いよ

「あら…滝沢家の…」

真っ赤なルージュが動く

冴子が嬉しそうにほほ笑んで、私を見た

馬鹿にした笑みだ

『勝った』なんて思ってるんでしょ?

華道の世界で、滝沢家はずっとトップに居続けた

いわば王家だったのに

有栖川に奪われたんだ

飯島と有栖川聖一郎によって…滝沢はもう…地位を失った

私はただの身寄りのない女となり、一人で静かに暮らしている

華道の世界から、もう足を洗ったのだ