僕様王子に全てを奪われて

「どうして道場をやめてしまったんですか?
筋が良かったのに」

「もう僕に通う理由はないでしょ?」

有栖川が剣道を?

やってたの?

こんな細い身体で?…って竜ちゃんも細身だよね

なんか…有栖川が剣道ってちょっとイメージが…湧かないんだけど

「そういうことですか」

竜ちゃんがふっと笑った

「そういうことです」

なに…

何、二人で納得し合っちゃってるわけ?

意味が…わからないんですけど

「愛子さん、少し話があります」

有栖川は竜ちゃんの横を通って、玄関をあがると私の手を持って有栖川の部屋に引っ張られた

『あ…時間!
ちゃんと気にして話してよ』

ドアの向こうから、冴子さんの声が聞こえた

え?

は?

『まあ、話さなくてもいいけどぉ…
時間だけは厳守よ
…てことで、藤城君は居間で待ってようね
お姉さんと』

お…お姉さんって…冴子は男じゃんか