僕様王子に全てを奪われて

「きっと今夜は楽しい夜になると思うので、先に言っておきますね」

飯島さんが運転をしながら、口を開いた

先に?

何を言っておくのだろう

「滝沢さんは、俺を聖一郎さんの許婚だと思ってますから」

「…はあ?」

僕は大きな声を出した

「ちょっと…からかってみたんですよね
あの子、からかい甲斐があるっていうか…ひとつ一つに良い反応をしてくれるから
ついつい口から出ちゃったっていうか」

はははっと飯島さんが笑う

「飯島さん…!」

「いや…なんかライバルがいたほうが…早く気持ちに気付いて、くっつくかなぁ?なんて思ったりもして…
でも全然、うまくいかなくて…ちょっと焦りました
俺のせいだったら、どうしよう…みたいな」

「完璧に飯島さんのせいですね」

「え? そうですか?
俺がいたから、今夜の運びになったんでしょう?
俺がいなかったら、あと何年先になっていたか…」