僕様王子に全てを奪われて

高波さんのウソくさい笑みよりは…信頼しても良い気がする

けど…別に、お金はいらないんですけど

男はふっと笑みを浮かべた

「俺の名前は小山内勇人だ」

「おさないぃ?」

私は思わず、名前を繰り返してしまった

どこかで聞いた!

その『おさない』って名前を…

どこかで

でも、すごく嫌なときに耳にした

「おさない…お、さ、な、い」

私はこめかみに指をあてると、記憶を手繰り寄せた

目の前にいる男は、ぎょっとした目で、私を見ていた

「な…なんだ?」

「あっ! そうだ
小山内莉子っ」

私は大きな声で、竜ちゃんの恋人の名を叫んでいた

そうよ!

あの人も、『小山内』って名前だった