僕様王子に全てを奪われて

まるで私が貧乏で、でも有栖川の教室に通いたいみたいな…感じじゃないのよ

…いや、貧乏なのは間違ってないけど

別に、有栖川の教室には通いたくないもん

「花の生ける才能はあるのに、勿体ないって飯島さんが言ってたよ」

「はあ…」

だってもともと華道の家の娘だったし…

それなりに基礎はあるからねえ

「通いたい?」

高波さんがのぞきこんできた

「え? は、はあ…まあ」

いや…別に、通わなくてもいいけど

「そっか」

高波さんがにこっと笑うと、ポケットから財布を出すと名刺を出した

「俺、会社経営してるんだけどね
俺は、気に入った人しか雇わないんだ
それで…君がお金に困っているって言うんなら、働き口を援助してあげるよ
俺のところで働けば、華道教室に通えるくらいの給料はあげられるから」

爽やかな笑みを私に見せた

私は名刺を受取って、高波さんがくれたカードを見つめた

ふうん

なんか…この人の笑み…好きじゃない

ウソくさい

そんな気がするんだよね

偽物の笑み

仮面をかぶっているっていうか

本心を隠している…ていうか

昔の私みたいな目をしてる