「反対に、アナタが抱かれないほうを選んだとする
『そんなに僕に抱かれたくないんですか』って思うでしょ
あんなに行きたがっている旅行なのに…抱かれるくらいなら、行かないって…
そこまで嫌ってる? 触れられたくない?って考えちゃう…」

「んな…自分勝手な!」

冴子がにやりと口元を緩めた

「人間なんてそんなモンじゃない?
アナタだって、藤城竜之介の前で冷静でいられた?
自分以外の恋人を目にして、『はい、そうですか』って笑顔で受け入れられた?」

確かに…笑顔では受け入れられ無かったけど…

苛々したし

どうして私じゃダメなの?って思った

親同士が決めた仲とは言え、必死に努力した私の身はどうなるの?って思ったけど

それと、今夜の条件は関係ないでしょうがっ!

「聖一郎さんだって必死なのよ
冷静に物事が考えられないくらい余裕なんてないのよ
アナタが欲しくて、欲しくてしょうがない
でも嫌われたくない…」

「…はい?
どう見てもこの条件は…嫌われると…」

冴子がくすっと笑みを漏らした

まだわからないの? と言わんばかりに私を背中を叩いた

「余裕なんてないからでしょ?
まわりの気持ちを気にしている暇すらないのよ
今夜が楽しみね
明日は早めに迎えに行くべきね」

冴子はにこっとほほ笑むと、一足先にレストランに戻っていった

これって…私にどうしろっていうことなの?