「別に隠さなくてもいいわよ
アナタの小さい胸を見たところで、可哀想って気持ちしか生まれないから」

冴子さんはさらりと嫌味を言うと、腕時計を見た

「少し早めに来て良かったわ
まさか玄関でこんなことになっているとは思わなかったわ」

「…あ、えっと冷蔵庫から、必死にここまで逃げてきました」

「はあ? 逃げてどうするのよ!」

「え…だって痛いんだもん」

「何が?」

「ゆ…ゆ…」

「ああ、指ね
それくらいで? 信じられない」

冴子さんが頭を左右に振った

「しかも噛むんだもん
痛いのやだって言ってるのに…」

「ああ…それはキスマークをつけようとしたのよ
…ってそれも知らないの?
なんて無知な15歳なのかしら…」

冴子さんが呆れたように、ため息をついた

知らなくて悪かったわね!

痛いのは嫌いなのっ

「ま、でも一歩前進ね
一応、昨日の作戦は成功ってことにしてあげるわ」

「そりゃあ…どうも」

はあぁ…なんかどっと疲れが…

「あとで、鏡を見るといいわ
キスマークがどういうものか…わかるから」

冴子さんがいたずらな笑みを浮かべた