蜂蜜男子の誘惑~右にバニラ 左にチョコ~

 その言葉に少し目を大きくさせ、また微笑むと左京先輩は元の体勢に戻り、メガネを指で下にクイっとずらす。

 そして髪を少し整えると、右京先輩を隣に呼ぶ。

(うわっうわぁ……)

 その光景はメンズファッション雑誌の表紙のようだった。

 身長180センチ越えの容姿が整った細身の男子2名。

 別にポーズをとってる風でもないのに、そう見えるのはやはりスタイルと容姿のせいなのかもしれない。

「そう、僕たちは一卵性双生児です。 性格は正反対に近いですけど」

「よろしくね、由依ちゃん」

 カッコイイ先輩たちを前にフリーズ状態のあたし。

 思考回路ショート。
 
 声も出せず、頷くことしかできない。

 だけどひとつだけ巡っている思い。

(もしかして、あたし……右京先輩似のカッコイイ彼氏ゲット?)

 理由はどうあれ、そういうことになる。

(や、やばくない!?)

 右京先輩への気持ちはどこへいったのやら。

 そう思われても仕方がないけれど……。

(でも本当に好きなのは右京先輩で、これは右京先輩に頼まれたから仕方なく引き受けて、左京先輩なんて右京先輩へ続く通過点で……)

 色々と言い訳を並べて自分を納得させようとする。

 だけど。

「宜しくお願いします、相川さん」

 そう微笑む左京先輩から目が離せない。

 右京先輩じゃなく、左京先輩を見つめてる。

(こ、これは右京先輩に似ているからだもんっ)

 そう言い聞かせ、頭を振るとふたりに視線を合わせる。

「よ、よろしくお願いします!」

 ここからあたしと甘い微笑みを持つ兄弟との関係は始まったのだった。