自覚はないが、余程腹が減っていたのかサンドウィッチをあっと言う間に平らげ、コーヒーを飲み顔を上げると女と視線が絡まる。





「ねぇ、大河って鈍いでしょ?」

「は?」


「大河って人を見てないでしょ。」


「は?」


「大河に会うの2度目なのに私の名前も顔も忘れちゃった?」





俺は昨日、この女と初めて会った……のに女は2度会ってると言う。





「なぁ、俺は昨日初めてお前に会ったんだ、顔も名前も知らねぇよ。」


「酷い男ね。」


「は?」


「だから、鈍いって言ってるのよ。」





女の言ってる意味が全然わからなくて頭を捻るとインターホンが鳴る。





「これでわかるわよ。」





そう言うと女は玄関に向かい、俺も玄関に視線を向ける。





1分も経たず戻って来た女に目が釘付けになった……いや、正しく言えば女の後ろに立っている人間に目が釘付けになった。





「親、父……?」


「なんだその顔は。」





女の後ろに立っていたのは、正真正銘……俺の親父だった。