でも、それは案外上手くいった。


「成程、詩乃チャンはこういう方針なのね。」

「はい、保志サンはどう思いますか?」

「そうねぇ、私なら…。」


簡単に保志サンの信用も得られちゃったり。


「保志サン、さすがですね。」

「それほどでも無いわよ。」





あの日から、もう1カ月が経ち、3月になろうとしている。

私はこんなところでモタモタしていていいのだろうか。


「詩乃チャン、ご飯にしましょう。」

「いえ…私はこの資料を作ってしまいたいので…先に済ませておいてください。」

「でも…。」

「私が御飯を食べている間に、資料に目を通しておいて頂けないでしょうか?」

「分かったわ。」



保志サンが部屋から出て行くと、部屋にはカタカタ…というパソコンを打つおとしか聞こえなくなってしまった。



「ふぅ…。」


もう…あれから1カ月。


竣に連絡を取ろうとした事は何度もあった。
家を抜け出そうとした事もあった。

でも、ケータイは変えられてしまい、連絡はできなくなってしまったし、
番号やアドレスが分かっているから、
メールや電話をしようにも北条グループの管理システムに引っかかってしまう。


とにかく連絡が取れず、1カ月。


-コンコンッ


「はい。」


顔を出したのは、メイド。


「詩乃様、お客様です。」


契約会社の方かしら…?


「お通しして。」

「かしこまりました。」