「はぁ…。」


そのまま部屋の扉に寄りかかる。


「っ…竣…。」


涙が頬を伝う。


『保志サン、今日は警告をどうもありがとう。』


部屋の中から聞こえて来てしまった会話。


警告…?


『とんでもございませんわ。

私は北条グループによかれと思い報告したまでですもの。』

『でも助かったよ。彼…竣クン…は少々詩乃には不似合いだと感じておりましたから。』


…何よ…?


『板垣グループが我がグループを買収しようなどと…
バカな事を考えるようになったものだ。』

『全くです…。本当にありがとう、保志サン。』

『いえ。では…こちらが契約書ですわ。』

『確か…内容は板垣グループの行動を阻止する変わり、
上原グループを我が北条グループに加える、という事だったね?』

『ええ。』

『では…。』


…おかしいわよ。


だって…竣のお父様もお母様もそのような事をする方では無いもの。




1度、竣のお宅にお邪魔した事がある。

あれは…夏休み…だったかしら。


竣のお父様もお母様もとてもお優しい方で…
私にとてもよくして下さったわ。


そのような事を考えるようなことではないわ。




『サイン、ありがとうございます。』

『いえいえ。それでは、失礼しますわ。』


…ここではダメだわ!

逃げないと…!